青春１８切符考（その７５）

災害の多かった平成２３年が暮れ、新しい年を迎えてはや２カ月。今回も無事青春１８きっぷ春シーズンが発売となりました。
今回のポスターの舞台はＪＲ西日本管内の呉線。安浦⇔風早駅間を行く１０５系電車の２両編成がその主役です。

呉線が青春１８きっぷポスターの舞台に選ばれたのは、平成１６年春の回以来ですので丸8年ぶりの登場と言うことになります。
さて、いつものようにポスターの図柄をじっくりと見てみますと、まず目につくのは、穏やかな瀬戸内の海と点々と浮かぶ島々に雲間から差し込む幾重の日の光が、春らしく霞んだような独特の色合い。そして、その瀬戸内の波打ち際から、少し内陸に進路を取った２両編成の電車が若葉萌える山の木々の淡い色彩のトンネルへと包み込まれていくかのように見える瞬間を切り取っています。
全体的に淡い緑と青で構成されていますが、山裾に１本だけ淡いピンク色に染まった木がアクセントになっています。
花の咲き具合からすると、ソメイヨシノのようにも思いますがどうでしょう。
そして、コピー。

「止まる駅、止まる駅で、いろんな笑顔が咲いていた。いい春です。」

これまたポスターの風景に奥行きを出す良いコピーだと思います。
と、言いますのも、春と言えば、やはり長い冬が終わり、生きとし生けるものすべてが躍動を始め、一斉に咲きだす草花を連想しますが、コピーにあるように｢笑顔の花」もまた咲き誇る季節と言うことができます。それは、進学、就職、あるいは長い仕事人生を終えて新たにリタイヤ生活を始める人など、人々の人生もまた新たな局面を迎えていく季節であるということです。そうした人たちが多く乗り合わせると、車内のあちこちから、乗客たちの期待と不安の入り混じった笑顔の花が満開となるものです。

春まだ浅い東方地方では、震災の爪痕がいまだ残り、三陸沿岸の鉄路はいまだに復旧のめどが立っていない区間も多々あります。そうした線区にも、一日も早く車内に笑顔の花が咲くように念願しておりますが、このポスターもまた、被災地域への応援歌のような感じがしております。
なかなかＧＯＯＤなポスターです。

さて、今回は無事に発売された青春１８きっぷですが、ＪＲのホームページなどによると今年の夏以降については、まだ詳細が未定との事。色々な事情が絡み合っているのでしょうが、いつものように発売の運びとなりますようお願いいたします。